
「あれ、このお客様、さっきとちょっと表情が違うな…」
先日、あるアパレルショップの店員さんが、そう小さくつぶやきました。
お客様は、ずっと鏡の前で同じ服を当てていました。
手に取っては戻し、また手に取る。
けれど視線は、どこか泳いでいて落ち着きません。

「実は、こういうときこそチャンスなんです」と店員さんは言います。
売れる人は、こういう瞬間を見逃しません。
“商品”ではなく、“人”を見ているから。
ちなみに、
「売れる人って、どんな人ですか?」と聞かれたら、
私はこう答えます。
「お客様の表情や、声のトーン、立ち止まり方を見ている人」
売れない人は、商品を見ています。
商品のスペック、価格、メリットを一生懸命伝えます。
それも大事なことです。
でも、それだけでは足りません。
人が買うのは「安心」や「自信」
人がものを買う理由は、スペックだけではありません。
その奥にあるのは──
・本当に似合うか不安
・買って後悔しないか心配
・自分に必要なのか分からない
そんな感情の揺れです。
さきほどの店員さんも言いました。
「この服が似合うかどうかを一番知りたいのは、お客様自身なんです。
でも不安だから、何度も鏡を見ちゃうんですよね」
商品を見ずに“人”を見た結果
その店員さんは、そっとお客様に声をかけました。

「実は、その色、お客様の髪色とすごく相性いいですよ。
私が見ていても素敵だなと思いました。」
お客様はパッと表情を変え、笑顔になりました。
そしてその服を、レジへ持ってきてくださったのです。
「その服が欲しかった」のではありません。
「自分に似合う」と背中を押してもらえたことが、買う決断につながったのです。

コト売りの基本は、
・誰に、どんなコトができるのか
・それが、どうしてできるのか
でも、さらに大切なのは──
「その人は今、どんな感情でそこに立っているか?」
これを知ろうという姿勢です。
POPを作るときも、SNSを書くときも、接客するときも──
「お客様がいま、何に迷っているか」
「どんな言葉をかけられたら、ホッとするか」
「どんな背中を押してほしいのか」
ここを見ているかどうかで、商いの景色は大きく変わります。
商いは、商品の知識を伝えることではありません。
「あなたをちゃんと見ていますよ」という安心を届けることだと思うのです。
今日、あなたが接するお客様は、
どんな感情を抱えているでしょうか?
“売れる人”は、商品を見ずに人を見ています。
それは、商いのいちばん楽しくて、やりがいのある部分。
そう実感しています^^

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