
「私なんかに、できることなんてあるんだろうか…」
現場で、スタッフさんからこんな声を聞くことがあります。
「私はただのパートだから…」
「商品知識がまだ足りないし…」
「接客が上手じゃないから…」
でも、本当は、誰でも“自分にしかできないこと”を持っている。
そう思うのです。
そして、それは いつもお客様の中にヒントがある。
顧客起点とは、「困りごとを出発点」にすること
顧客起点とは、こういうことだと考えてみてください
「この人は、今、何に困っているんだろう?」
「どんなことに迷っているんだろう?」
「何を望んでいるんだろう?」
商品説明や接客のテクニックを先に考えるのではなく、
お客様の気持ちをスタート地点にするのが顧客起点です。
事例①「パートだから…と思っていたスタッフさん」
あるドラッグストアのパートスタッフさんがいました。
「私はただ品出しをするだけ。接客なんて得意じゃないし…」
そう思っていたそうです。
ある日、棚の前でずっと立ち止まっているお客様を見かけました。
声をかけるのをためらいましたが、思い切って一言だけ伝えたそうです。

「何かお探しですか?もしよければ、お手伝いしますね。」
すると、そのお客様が泣き出しました。
「花粉症で毎年つらくて…でも薬もたくさんあって、どれを選んでいいか分からなくて…」
スタッフさんは、自分が普段使っている商品を伝えました。
「私も花粉症ひどいんですけど、これは眠くならないので仕事中も助かってるんです。」
お客様はその薬を買い、
「ありがとう。話を聞いてくれただけで、すごく楽になった」と笑顔で帰られたそうです。
そのスタッフさんは後でこう言いました。
「私でも、お役に立てたんだと思いました」と。
事例②「接客が苦手…と思っていたスタッフさん」
ある洋服屋さんで、
接客が苦手で、ほとんど話しかけられないスタッフさんがいました。
でも、お客様が試着室から出てきたとき、
ポツリとつぶやいた声を聞き逃しませんでした。
「このスカート、可愛いけど私には派手かな…」
そのスタッフさんは、勇気を出して一言。
「でも、お客様の雰囲気ならすごく似合うと思いますよ。
今日のトップスとも色がリンクして素敵です。」

お客様の表情が一瞬で変わりました。
「そうかな…? じゃあ、これください!」
苦手でも、「お客様の言葉に耳を澄ます」だけで、
自分にできるコトが見えてくるんですね。
事例③「商品知識がない新人スタッフ」
ある食品売場の新人さん。
お客様に聞かれても、すぐ答えられずオロオロしてしまうのが悩みでした。
でも先輩にこう教わりました。
「分からなければ、聞いてきますって言えばいいんだよ。
でもまずは、お客様が何に困ってるかを聞くのが先!」

次の日、その新人さんはお客様にこう言いました。
「どんなお料理に使うご予定ですか?」
お客様はこう答えました。
「実は、娘が小麦アレルギーで…。
パン粉の代わりになるもの、探してるの。」
その瞬間、新人さんは初めて「自分にできるコト」を感じたと言います。
「それなら、お米のパン粉があるので、ご案内しますね!」
お客様はすごく喜び、
「今日来てよかった!」と言ってくださったそうです。
顧客起点で考えれば、役割は必ず見つかるのです。
困っている人を見つけ
その人の気持ちを聴く
そして、解決できることを探す
これが、コト売りの実践です。
・誰に、どんなコトができるのか
・それは、どうしてできるのか
この2つの問いの中に、
「自分にしかできないコト」は必ず隠れています。
商いは、「商品を売る」ことではありません。
誰かの困りごとを軽くすることだと考えてみてください。
そうした体験から、
あなた自身も「自分は役に立てる人間なんだ」と感じられるはずです。
あなたは、目の前の誰かのために、
今日、どんなコトができますか?

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