
「若い人は接客されるのが嫌い」
ヤング向けのアパレル業界で、これは常識のように語られてきた言葉です。
接客をすれば嫌がられる。だから話しかけない方がいい。
スピンズも、かつてはその常識を疑いませんでした。
売り場を見やすくする。スタッフは声をかけすぎない。
トレンド情報の収集と、他店よりも先に仕掛ける展開スピードで勝負。
でも、競争が激しくなる中で、それだけでは勝てなくなってきました。
スピンズは、トレンドを追いかけ、バイヤーが仕入れた商品を各店舗に送り、
店舗スタッフはその商品をきれいに並べる。
トレンドはどんどん入れ替わるので、次々と入荷する商品を店頭に並べることが
店頭スタッフの仕事で、お客様と関わる時間は持てなかったのも事実。
この流れは、業界でも当たり前です。
現場は多くの時間を「作業」に費やす毎日でした。
そして、売上目標が常に頭から離れず、
心から接客を楽しめない空気も漂っていました。
店頭で働くバイトのメンバーの大半は、洋服や古着が大好き。
でも接客には苦手意識があり、「声をかけたら嫌がられるんじゃないか」という恐怖心を抱えていました。
そんな中で、スピンズが始めた挑戦があります。
それが「お客様を喜ばせることを、全員で考え、行動に移す」という取り組みです。
きっかけは、横浜ワールドポーターズ店のリニューアルでした。
古着店としてリニューアルオープンに向けたキックオフミーティングで、こう決めたのです。
「売上のことは一度脇に置こう。
とにかくお客様を喜ばせることだけを考えよう。」

最初は不安だらけでした。
「若い人は接客が嫌い」という業界の常識もありましたし、
現場スタッフの中には、接客そのものを嫌がる人もいました。
それでも皆で「どうすればできるか?」を考え続けました。
分からないことは、分かる人が教える。
接客のポイントと声の掛け方など「私はこうしている」という実体験を共有して
できる方法を皆で考えて行動しました。
不思議なもので、皆で動いていると、
できなかったものもできるようになり、お客様と会話をすると、
たくさん喜んでくれることが出てきました。

それを、記録してみようとスタートしたのが「お客様喜ばせシート」です。
・どんなお客様が来られたか
・どんな声かけをしたか
・どんな反応があったか
これをスタッフが記入し、店内で共有する仕組みができました。
シートを通して、スタッフ同士で「こんな声かけをしたら喜ばれた!」という体験が伝わり、最初は接客が怖かったスタッフも、少しずつ自信をつけていきました。
こんな取り組みを進めるうちに、大きな気づきがありました。
若い人は「売り込まれる接客」は嫌いだけれど、
「相談に乗ってくれる接客」ならむしろ喜んでくれる。
「話しかけない方がいい」という思い込みが、
スピンズに来る多くのお客様には当てはまらなかったのです。
「何かお困りですか?」
「誰かへのプレゼントですか?」
そんな問いかけをきっかけに、お客様は自分のことを話してくれるようになりました。
「お姉さんに選んでもらった服が本当に良かった」
「相談できて楽しかった。また来たい」
こうした声が増え、Googleの口コミにも商品ではなく「スタッフ」への感謝の言葉が溢れるようになりました。
売上も人も、変わった

半年後には、、、
・客単価は 2割アップ
・リピートするお客様が増加
・紹介客の増加
・「ここで働きたい」というバイト応募も増えた
そして何より、現場の空気が変わりました。
数字のプレッシャーではなく、
「今日はどんな人を喜ばせた?」
という会話が飛び交うようになったのです。
人が育ち、仕事が楽しくなる
さらに、今回の取り組みで改めて感じたことがあります。
商売のヒントは、常にお客様の中にある。
現場でお客様に触れ、自分が役に立っていると実感した瞬間、
人は成長し、仕事にやりがいを感じる。
お客様を喜ばせることは、売上のためだけではありません。
スタッフ自身が「接客が楽しい」「もっとお客様を喜ばせたい」と思うようになる。
それが結果として、数字にもしっかりつながるのだと、スピンズは教えてくれています。
この取り組みは、アパレルだけの話ではありません。
飲食、スーパー、美容室、家電、あらゆる業界に共通することです。
「何を買うか」ではなく、「どんな状況か」
「どんな商品か」ではなく、「その人の暮らしはどうか」
商売とは、人を喜ばせること。
喜ばせた先に、売上は必ずついてくる。
「売ることより、喜ばせること。」
それが、スピンズが示した現場発の変革のカタチです。
もしあなたのお店や会社が、「売上のための接客」で苦しくなっているなら、
まずは今日一人のお客様を喜ばせることから、始めてみませんか?

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