
これまで「伝わらない理由」についていくつかの視点でお話ししてきましたが、最後に最も根本的、かつ多くの企業にとって少しショッキングな事実をお伝えしなければなりません。
それは、「お客様は、あなたの会社をあなたが思うようには見ていない」ということです。
会社側が「うちはここが素晴らしい」「これが選ばれる理由だ」と信じていることと、お客様が実際に感じている価値の間には、驚くほど深い溝(ギャップ)があるのです。
企業には、自社の技術、歴史、あるいは製品のディテールに対する強い「自負」があります。それは素晴らしいことですが、その熱量が強すぎるあまり、お客様が求めている視点を追い越してしまうことが多々あります。
例えば、ある精密加工メーカーが「0.01ミリの精度を実現した画期的な工法」を必死にアピールしていたとします。
しかし、その会社に発注しているお客様の認識は、実はこうだったりします。
「あの会社は、とにかく納期の融通を聞いてくれるから助かるんだよね」
この場合、会社側が語る「技術の凄さ」は、お客様にとっては背景にあるノイズに過ぎません。会社側が「主役」だと思っている強みと、お客様が「恩恵」だと感じている価値がズレているのです。
なぜ、このようなズレが起きるのでしょうか?
会社側の視点(点):
「この製品のここが凄い」「このサービスはここが他社と違う」という、製品そのもののスペックや特徴に注目します。
お客様側の視点(線):
「この会社と付き合うと、自分の仕事(生活)はどう楽になるのか?」「今の悩みから解放されるのか?」という、体験やプロセスの変化に注目します。
お客様は、あなたの会社の「機能」を評価しているのではなく、あなたの会社が提供する「自分の未来の変化(コト)」を値踏みしているのです。
「自分たちの当たり前」は、お客様にとっての「謎」
もう一つの大きなズレは、社内では当たり前の「常識」が、外の世界では全く通用しないということです。
長年その業界にいると、業界用語や商習慣が体に染み付きます。そのため、お客様が「どこでつまずいているのか」「何が不安なのか」という初期衝動を忘れてしまいがちです。
お客様からすれば、あなたの会社は「何やら難しそうなことを言っている、近寄りがたい専門組織」に見えているかもしれません。そうなると、どんなに良い情報を発信しても、心のシャッターを通り抜けることはできません。
「伝わらない」と悩んだとき、最初に見直すべきは発信のテクニックではなく、「お客様の目には、今のわが社はどう映っているか?」という客観的な視点です。
自分たちが言いたい強みを一旦脇に置き、お客様が自社を「何の解決策」として利用しているのか、あるいは「なぜ他社ではなく自社に声をかけたのか」を徹底的に探ること。
この「鏡に映った自社の姿」を受け入れることから、本当の意味での「伝わる発信」が始まります。
さて、ここまでシリーズ①として、なぜ今「伝わらない」のかという問題の根源を掘り下げてきました。
では、なぜこれほどまでに「伝わり方」が難しくなってしまったのか? それは、お客様の「探し方」や「選び方」そのものが、この数年で劇的に変化したからです。
次回からはシリーズ②「消費行動は、こう変わった(時代変化編)」へと入っていきます。まずは「検索」という、商売の当たり前が崩れ始めている現状からお話ししましょう。
あなたの会社の「自慢の強み」を一切封じられたとしたら、
お客様はあなたの会社のことを、どんな言葉で褒めてくれるでしょうか?
