
前回、これからは社名の露出(認知)を増やすことよりも、自社がどのような課題を解決する組織なのかを正しく「認識」してもらうことが重要だとお伝えしました。
しかし、ここで一つの疑問が生まれます。
「それなら、うちはどんな解決策があるのか、毎日一生懸命発信しているよ。それでも伝わらないのはなぜ?」
実は、ここに「発信」という言葉が持つ恐ろしい罠が潜んでいるのです。
「発信しているのに伝わらない」という現象の正体。
それは、多くの企業が「出力(アウトプット)」と「伝達(コミュニケーション)」を混同していることにあります。
たとえるなら、大海原に向かって拡声器で叫んでいるようなものです。
叫んでいる本人(企業)は「これだけ大きな声を出しているんだから、誰かに聞こえているはずだ」と思っています。しかし、波の音にかき消され、相手の耳に届かなければ、それはただの「音」であり、意味のある「言葉」にはなりません。
1. 「情報の翻訳」が抜けている
企業は自社の商品やサービスを熟知しています。そのため、無意識のうちに「専門用語」や「業界の常識」で語ってしまいます。
しかし、お客様はその道の素人です。
「自社が語りたい言葉」を「お客様が理解できる価値」に翻訳せずにそのまま出してしまうと、お客様の脳は「自分には関係のない情報」として瞬時にシャットアウトしてしまいます。
2. 「主語」が入れ替わっている
伝わらない発信の多くは、主語が「わが社」になっています。
「わが社は、〇〇という新技術を開発しました」
「わが社は、創業〇〇年の歴史があります」
「わが社のサービスは、〇〇が特徴です」
これらは事実ですが、お客様が知りたいのは「わが社の凄さ」ではなく、「それによって私の課題がどう解決されるか」だけです。主語が「わが社」のままだと、それは単なる「宣伝」として、心の壁に跳ね返されてしまいます。
3. 「文脈(コンテキスト)」が共有されていない
これが最も大きな原因かもしれません。
企業は「自社の製品が素晴らしいこと」という前提(文脈)で話を始めますが、お客様にはその前提がありません。
なぜその技術が必要なのか? なぜ今、そのサービスが世の中に求められているのか? という背景(コト)の共有がないまま、結論だけを伝えても、相手の心には響かないのです。
「伝える」ための準備、できていますか?
「伝わらない」のは、決してツールの使い方が下手だからでも、文章力が足りないからでもありません。
「自分たちの視点」から一歩も外に出ないまま、情報を外に放り投げているだけだからです。
情報を出すこと(発信)を目的化せず、その情報が相手に届いたときに「あ、これは自社のための話だ」と思ってもらえるための工夫。つまり「相手の視点への歩み寄り」こそが、伝わらない正体を打ち破る唯一の鍵となります。
では、なぜこれほどまでに「自分たちの視点」から抜け出せないのか?
次回は、その根本的な原因である「お客様は、あなたの会社をあなたが思うようには見ていない」という、少し耳の痛い、でも避けては通れない真実についてお話しします。
あなたの会社の発信は、「拡声器での独り言」になっていませんか?
その言葉は、相手が受け取りやすい「形」に整えられているでしょうか。
