
~知られることより、「どう思われているか」が大切になる~
この10年で、商売における発信の意味も大きく変わりました。
2016年頃、多くの会社やお店にとって大切だったのは、まず「認知を広げること」でした。
そのために、ホームページを整えたり、ブログを書いたり、SNSを始めたり、チラシを配ったり、広告を出したりしていました。
「まず知ってもらわなければ、始まらない」
これは、今も間違いではありません。
どれだけ良い商品があっても、知られていなければ選ばれません。
どれだけ良いサービスを提供していても、存在が届いていなければ相談されません。
だから、認知を広げることは、これからも大切です。
でも、この10年で大きく変わったことがあります。
それは、ただ知ってもらうだけでは、選ばれる理由になりにくくなったということです。
以前は、名前を知っていること自体が安心につながることがありました。
そういう理由で、選ばれることもありました。
しかし今は、お客様が受け取る情報量が圧倒的に増えています。
SNSを開けば、次々にお店や商品が流れてきます。
検索すれば、似たような会社がいくつも出てきます。
口コミを見れば、良い評価も悪い評価も出てきます。
動画を見れば、雰囲気や使い方まで分かります。
AIに聞けば、候補を整理して教えてくれます。
つまり、お客様はたくさんの会社や商品を「知っている」状態になりやすくなりました。

でも、知っているからといって、すぐに選ぶわけではありません。
むしろ、知っているものが多すぎるからこそ、
「結局、何が違うのか分からない」
「どこも良さそうに見える」
「どの会社が自分に合うのか分からない」
「名前は見たことがあるけれど、どんな会社なのかまでは分からない」
という迷いが生まれています。
ここで大切になるのが、認知ではなく「認識」です。
認知とは、知っていること。
認識とは、どういう存在として理解されているかです。
たとえば、同じように名前を知られていたとしても、お客様の中に残っている印象は違います。
この違いが、認識です。

つまり、これから大切なのは、
「どれだけ多くの人に知られているか」だけではなく、
「知ってくれた人の中に、どんな理解が残っているか」なのです。
ここを間違えると、発信はただの露出競争になります。
もちろん、発信量が必要な場面もあります。
見つけてもらうための努力も大切です。
でも、たくさん発信しても、お客様の中に何も残っていなければ、選ばれる理由にはなりません。
問題は、どれだけ見られたかではありません。
見た人の中に、どんな印象が育ったかです。
たとえば、園芸店で考えてみます。
という認知だけでは、他のお店と比べられやすくなります。
でも、
という認識が育つと、選ばれ方が変わります。
お客様は、単に花や苗を買いに来るのではなくなります。
そう感じて来店するようになります。
これは、商品だけで選ばれているのではありません。
お店の姿勢や考え方、届けたい価値が伝わっている状態です。
リフォーム会社でも同じです。
という認知だけでは、価格や施工内容で比較されやすくなります。
でも、
という認識が育つと、相談され方が変わります。
お客様は、いきなり価格だけを聞くのではなく、
と思うようになります。
この違いは、とても大きいです。
認知は、入口です。
認識は、関係性の始まりです。
認知は、「知っている」という状態。
認識は、「こういう人たちだと思っている」という状態。
そして、お客様はその認識をもとに、選ぶかどうかを判断しています。
だから、これからの発信では、
「何を知ってもらうか」だけではなく、
「どう認識してもらいたいか」を考える必要があるのです。
お客様に、どんなふうに思い出してもらいたいのか
ここが曖昧なまま発信すると、情報は出ていても、印象は育ちません。
それでも、お客様の中に、
が残らなければ、選ばれにくいのです。
ここに、コト売りの役割があります。
コト売りは、商品そのものを否定する考え方ではありません。
商品を売らないということでもありません。
商品やサービスを通して、
・誰に、どんなコトができるのか。
・そして、それはどうしてできるのか。
そこを明らかにしていく考え方です。
つまり、コト売りは「認識を育てる」ための考え方でもあります。
なぜなら、お客様は商品名だけでその会社を覚えるのではないからです。
「あの人は、私の悩みを分かってくれた」
「あのお店は、買った後のことまで考えてくれた」
「あの会社は、売ることよりも、暮らしが良くなることを考えてくれた」
「あそこに行くと、少し前向きな気持ちになれる」
そういう体験が、認識になります。
そして、その認識が積み重なることで、信頼になります。
ここで大切なのは、認識は一度の発信でつくられるものではないということです。
それだけで、お客様の認識が深く育つわけではありません。
そうした小さな積み重ねによって、
「この会社は、こういう会社なんだ」
「このお店は、こういうことを大切にしているんだ」
「この人たちは、こういうお客様に向き合っているんだ」
という認識が育っていきます。
つまり、発信だけを変えても足りません。
・発信と現場がつながっていること。
・言葉と行動が一致していること。
・伝えていることと、実際に体験することがずれていないこと。
そこが大切になります。
SNSでは親切そうに見える。
でも、実際に行くと相談しにくい。
ホームページでは丁寧に向き合うと書いてある。
でも、問い合わせると売り込みが強い。
チラシでは初心者歓迎と書いてある。
でも、店頭では専門用語ばかりで分かりにくい。
こうなると、認識は育つどころか、信頼を失ってしまいます。
これからの時代は、良く見せるだけではなく、伝えていることと実際の姿が合っているかが問われます。
なぜなら、お客様は以前よりもいろいろな角度から見ているからです。
さまざまな情報を通して、その会社やお店を判断しています。
だからこそ、認知を広げるだけではなく、認識を育てることが大切なのです。

では、認識を育てるために、何をすればよいのでしょうか。
まずは、自分たちがどう認識されたいのかを言葉にすることです。
「何を売っている会社か」ではなく、
「誰に、どんなコトができる会社か」。
「どんな商品がある店か」ではなく、
「お客様に、どんな気持ちや時間を届けたい店か」。
「他社と何が違うか」ではなく、
「自分たちは、何を大切にしてお客様に向き合っているのか」。
そこを言葉にすることです。
たとえば、
このように、自分たちが届けたいコトを言葉にすると、発信の軸ができます。
発信の軸ができると、投稿の内容も変わります。
売り場の見せ方も変わります。
接客の言葉も変わります。
お客様への提案も変わります。
そして、お客様の中に残る印象も変わります。
これが、認識を育てるということです。
これは、広告やSNSのテクニックだけの話ではありません。
お客様の中に、どんな自分たちとして残っていくのか。
どんな存在として思い出してもらうのか。
どんな相談の場面で、名前を思い浮かべてもらうのか。
そこを考えることです。
たくさんの人に知られることは、大切です。
でも、これからはそれ以上に、
「どんなふうに知られているか」
「どんな存在として理解されているか」
「どんな期待を持って思い出されるか」
が大切になります。
そして、その認識は、商品説明だけでは育ちません。
そういうものが、お客様の中に残っていきます。
この10年で、知ってもらう手段は増えました。
でも、知ってもらう手段が増えたからこそ、ただ知られるだけでは埋もれてしまいます。
大切なのは、知ってもらった先に、
という認識を育てていくことです。
そこに、これからの売り方の大切な変化があります。
そして、そこにこそ、コト売りが活きる時代が来ているのだと感じます。
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